「海角七号」の魏徳聖監督、花蓮に来る

日本でも公開された「海角七号魏徳聖監督が待望の新作「セデック・バレ」(「賽徳克巴莱Seediq Bale」)を撮り終わり、大学で講座を行った。タイトル【大師講座】「有夢最美 築夢成真」から分かるように、夢を叶えた監督に学んでほしい、というのが企画側の意図。

あるとき誰かに、「スターも、言葉(中国語や英語じゃないってこと)も、予算もないんじゃ無理」と言われて、じゃあまず、そのどれもない映画で成功してやる!と「海角七号」を撮って台湾映画史上空前の大ヒット。で、その評価を元に念願の「セデック・バレ」を撮ったというわけ。
このはなし、前にもしたっけか?
(重複を避けるため、映画についてはannoncitaさんの日記http://d.hatena.ne.jp/annoncita/20090929#tbでどうぞ)

新作「セデック・バレ」公式サイト
http://www.wretch.cc/blog/seediq1930&category_id=12974550(中国語)
http://ameblo.jp/seediqbale(日本語)


監督は映画撮影という過酷な肉体労働をバリバリこなす人には見えず、(ちょっと周防正行監督みたい)ひょろっとした色白お兄さん。非常に現実的な面とプレッシャーをはねのける、飄々とした感じを同時に備えている。学生の質問にユーモアを交えて上手に答えるところも、話の上手さよりも自然な佇まいが信頼を集めて、途中で「えー、ちょっとトイレ行って来てもいいかな?」って言って余計好かれちゃう、みたいな(これ本当)。


以下、印象に残った部分の思い出しまとめ。
自分も原住民の映画を撮っているという学生「漢族が原住民を撮ることで、彼らを"消費"してる、って言われない?」(よくあるテンプレ批判に対して)
監督「公開してからもっと言われるだろうから、心の準備はできてるけど(笑)ぼくは自分のすべてを賭けて映画を撮っているわけだから、"消費"?って何?映画がこけたらいくら借金背負うか知ってるかって、言いたいよ。」

「原住民だから撮るんじゃない、この物語とその精神が大事だから撮る」

学生「どうやったらいい映画が撮れますか?」(おいおい)
監督「まず、まじめに生活することだね(笑)。ちゃんと本読んで、勉強するの。あとは自分が本当に面白い、感動したことを撮らないと、人も感動しないんじゃないかな。」

学生「どうやったら、そんな風に自信が持てますか。」
監督「全くスポンサーが集まらなくて落ち込んでいた時、シャワー浴びながら"オレなんか悪いことしたっけ?"と考えたら、してなかった。ギャラもはらうし、人を傷つけるわけでなし。毎日準備もするけど、必ず問題が起きて、それが解決するのを待って、の繰り返し。自分が間違ったことをしてないと信じてればいい。」

「監督を目指したことはないんだ。でも撮りたいものがあって、それを撮り終わったらそれで終わりでもいいかな、って。」


質問の答えはどれも当たり前、といえば当たり前なのだが、諦めずに成功して、また挑戦するプロの監督が言うと説得力がある。公開が楽しみだ。映画そのものも期待できるけれど、色んな意味で本当に台湾映画史をまた塗り替えてほしい。