台湾留学生事情(ダークサイド)

留学生会を主催して色々な国から来た学生と付き合うようになり、この半年間勉強になることがたくさんありました。

はじめは自分のいる学校があまりにも留学生に対して配慮がない、これではいくら台湾の片田舎とはいえ、国立大学としてどうかと思うことだらけで、学生の側から意見を言いやすい環境を作りたいと思ってがらにもなく始めたのですが、こういった組織運営の難しさは、学生たちの方にも原因があるのかもしれないと思うようになりました。以下、忘備録として問題を整理します。

<学校(台湾)側の事情と問題>

  • 台湾社会の少子化が深刻(台湾はドイツと並んで世界最悪の出生率)で、入学者が減少しているため、その穴埋めとして留学生を盛んにリクルート。教育部も将来各大学の1割を外国人学生にする目標を掲げて「国際化」をアピールしたいねらいで奨励。
  • 台湾大学など都市部のトップクラスの大学にはもともと留学希望者が多いし、受け入れ側にも経験があるが、地方となるとやって来る外人そのものが少ないので、大学側の経験ゼロ。
  • うちの大学の留学生はここ三年で急激に増加し、今後更に増加の一途が予測されている。現時点でモンゴル人とインドネシア人が三割づつ、あとはマレーシア人、インド人、ベトナム人が分け合い、3人以下の国の合計が16%で、その内訳はアフリカと南米各国、イラン、アメリカなどなど。ちなみに日本人は自分のみ。ようは大半が台湾より経済的に弱いアジアからの学生で、大学から授業料免除とぎりぎり食費程度の奨学金でつられてきた子たちである。
  • 学校側はもともと準備なしで受け入れを始めたため、食堂にも英語メニューなどなし(要求しても未だにない)、学校が発信する講演会や学生寮などの生活情報はすべて中国語。職員もほぼ英語が通じず、台湾人学生たちの英語能力もかなり限定されているせいか、外人を見るとみんな急に「恥ずかしがり屋さん」になるため、コミュニケーションが困難。
  • 英語で授業できる教授が少なく、取れるクラスの選択肢がない。無理矢理専門外のクラスを教える先生もいるため、質が保てない。
  • 英語圏でもないのに英語を中心とすることが「国際化」と誤解している節があり、重要なはずの中国語教育に対する支援はかなり限られている。現在100人近い生徒に対して、専任の中国語講師一人。週1で無料の授業があるが、0から始めて卒業までの2から4年で中国語の基礎会話ができるようになる生徒がいたら、それは個人的な努力によるところが大きい。
  • 教授陣の対応に関しては人によりけりだが、少なくとも英語が通じる点で救いがある。学生以上に職員にとりわけ異文化交流の意識とスキルが欠けていて、言葉も絶望的な場合が多い。面倒な仕事が増えたぜ、と思っている職員は多いことだろう。
  • などなど。。。

<留学生側の問題>

  • 簡単に入学できて、金がかからないという理由でこの学校に来ている学生も多いので、卒業さえできればよいという態度。学業も生活も手を抜けるところは抜きまくり、更に現地の言葉や文化をを学ぼうという気もさらさらない。
  • 留学生から聞いたところによると、入学資格にトフルなどの制限もなく、英語で授業を受けるのに、英語のレベルが低すぎて授業についていくのが困難な学生が少なくない。
  • 学校などに対する不満があっても、事務所を通して改善を促す、提言する。といった行動にでるものが極端に少ない。これでは自分たちの権利が守れないのだが、文化や習慣の違いがあり、「権利」や「公共」という意識が薄いのかもしれない。
  • では実際、問題発生時にどう対処するかと言うと、人数の多いモンゴル人やインドネシア人は同国人のネットワークで解決する。だから問題が表面化せず、学校も先生も知らずに終わるので、教訓が生きない。助けてくれる人が見つからない学生や、来たばかりの学生は困りっぱなし。
  • などなど。。。

国立なのだから、教育部がちゃんとした受け入れコードを設定して、留学生を受け入れる前に、語学センターの設置や、プログラムの中身に一定の基準を設け学校側にクリアさせるべきなのだ。各校に任せておいて、たまに官僚が予告ありの「検査」で形式的なインタビューをしても無意味に決まってる。

学生の質が悪い、と書いたが、もちろんやる気のある学生もいて、そういう子たちはかなり「騙された」と感じている。期待はずれでがっかりな良い学生が母国に帰って後輩に台湾を勧めるかどうか疑問である。
しかも、学生の質を問わず、頭数だけ揃えようというのはむしろ学校の方なので、しょうがない。誰を責めれば良いのか?という先生もいるけれど、わたしはやはりリクルートしてきた学校の自己責任の方が重いと思う。